この記事の結論
運送会社の事業承継の相談は、たいてい「車両の更新費用をどうするか」から始まります。しかし補助金を使う前提で考えると、順序が逆です。
運送業の承継で最初に決める3つのこと
運送会社の事業承継の相談は、たいてい「車両の更新費用をどうするか」から始まります。しかし補助金を使う前提で考えると、順序が逆です。事業承継・M&A補助金は承継の方法によって申請できる枠が完全に分かれている制度で、枠を先に決めないと対象経費も補助率も上限額も決まりません。
最初に決めるのは次の3つです。
枠を決める前に確定させる3点
- 誰に継ぐのか。親族・従業員なら事業承継促進枠、第三者(他社)なら専門家活用枠です。事業承継促進枠はM&Aによる第三者承継を対象外としています。
- 常時使用する従業員は何人か。運送業は公募要領の小規模事業者等の3区分のうち「製造業その他」に整理される業種で、20人以下なら補助率が1/2から2/3に上がります。自社の区分は公募要領で確認してください。
- いつ承継するのか。事業承継促進枠は公募申請受付終了日から5年後まで(16次公募なら2026年11月6日から2031年11月5日まで)に承継を完了する蓋然性が必要です。
ここでいう被承継者と承継予定者の関係が、そのまま枠の分岐になります。以下、枠ごとに運送業での使いどころを整理します。
| 承継のかたち | 使う枠 | 補助上限額 |
| 子・親族が会社を継ぐ | 事業承継促進枠 | 800万円(賃上げ要件達成で1,000万円) |
| 役員・従業員が会社を継ぐ | 事業承継促進枠 | 800万円(賃上げ要件達成で1,000万円) |
| 他の運送会社に会社・事業を売る | 専門家活用枠 売り手支援類型 | 600万円(DD費用上乗せで800万円) |
| 他の運送会社を買う | 専門家活用枠 買い手支援類型 | 600万円(DD費用上乗せで800万円) |
| 買った会社と自社を統合する | PMI推進枠 | 専門家活用類型150万円/事業統合投資類型800万円 |
| 継ぎ手が見つからず廃業する | 廃業・再チャレンジ枠 | 300万円 |
親族・従業員に継ぐなら事業承継促進枠
事業承継促進枠は、5年以内に親族内承継・従業員承継等(事業再生を伴うものを含む)を予定している中小企業者等が対象です。運送業では、現社長から子や配偶者へ、あるいは長年の運行管理者や専務へ代表の座と株式を渡すケースがこれにあたります。
承継予定者の要件
継ぐ人の側に要件があります。法人の場合は次のいずれかです。
| 類型 | 要件 | 運送業での典型例 |
| 役員経験 | 対象会社の役員として3年以上の経験 | 専務・常務として3年以上在任している後継者 |
| 従業員経験 | 対象会社に継続3年以上雇用され業務に従事 | 運行管理者・配車責任者として3年以上勤務している社員 |
| 通算 | 役員経験と従業員経験の通算3年以上 | 入社後にドライバー、その後に取締役となった後継者 |
| 親族 | 被承継者の親族(六親等内の血族・配偶者・三親等内の姻族)であり、対象会社の代表経験が無い者 | 他社勤務から戻ってきた社長の子 |
個人事業主として運送業を営んでいる場合は、継続3年以上の雇用経験者、または被承継者の親族(代表経験無し)が対象です。個人事業主の場合は被承継者と承継予定者の共同申請が必須で、法人のような代表者交代ではなく事業譲渡(廃業と開業)というかたちになります。
会社側の要件
会社の側にも条件があります。公募申請時点で対象会社が3期分の決算・申告を完了していること(個人事業主は開業届提出から5年経過していること)、そして経営権と所有権(株式・持分等)の両方が被承継者から承継者へ移ることです。代表印を渡しただけで株を持ったままにしていると、実質的な事業承継が行われたとみなされません。
なお、承継予定者個人ではなく承継予定者が所有する法人が株式を取得するホールディングス承継も、被承継者がその法人に出資していないこと、承継予定者がその法人株式を議決権ベースで2/3超保有していること、その法人が申請者法人株式を100%保有することの3要件を満たせば対象になります。運送会社を複数持つグループで再編を考えている場合に関係します。
補助率と上限額
| 区分 | 補助率 | 補助下限額 | 補助上限額 |
| 通常(小規模事業者等以外) | 補助対象経費の1/2以内 | 100万円 | 800万円(賃上げ要件達成で1,000万円) |
| 小規模事業者等 | 補助対象経費の2/3以内 | 100万円 | 800万円(賃上げ要件達成で1,000万円) |
| 廃業・再チャレンジ枠との併用 | 事業費の補助率に従う | ー | 300万円の上乗せ |
800万円を超えて1,000万円までの部分は、小規模事業者等であっても補助率は一律1/2以内です。上限を1,000万円に引き上げる賃上げ要件は、補助事業完了日を含む事業年度から翌年度にかけて従業員1人当たり給与支給総額の上昇率3%以上を達成し、公募申請時までに全従業員・役員へ表明していることです。未達成の場合は引き上げ額(最大200万円)の返還を求められます。ドライバー不足で人件費が上がっている運送業では実現可能性の高い要件ですが、事業計画期間中の各年度末で水準を維持できない場合も返還の対象になる点は押さえておいてください。
あわせて生産性向上要件があります。補助事業期間を含む5年間の計画で、付加価値額または1人当たり付加価値額の伸び率を年3%向上させる計画であることが必要です。付加価値額は営業利益に人件費と減価償却費を加えたもので定義されています。車両を増やして売上だけを伸ばす計画ではなく、実車率や積載効率の改善まで書ききれるかどうかが、計画の説得力を左右します。詳しくは事業承継促進枠の解説と事業計画書の書き方をあわせてご覧ください。
運送業でつまずきやすい対象経費の線引き
対象経費は枠ごとに別の要領で定められています。運送業の相談で特に問題になるのが、被承継者に支払うお金と売上原価にあたる費用の2つです。
| 枠・類型 | 対象経費の大枠 |
| 事業承継促進枠 | 承継を契機とした取組に要する経費(公募要領9章に規定。被承継者に支払う譲受費用は対象外) |
| 専門家活用枠 | 謝金、旅費、外注費、委託費、システム利用料、保険料の6区分 |
| PMI推進枠 PMI専門家活用類型 | PMI計画の策定・実行に係る専門家活用費用 |
| PMI推進枠 事業統合投資類型 | 設備費、外注費、委託費(統合作業の外部委託等) |
| 廃業・再チャレンジ枠 | 廃業支援費、在庫廃棄費、解体費、原状回復費、リースの解約費、土壌汚染調査費、移転・移設費の7区分 |
運送業で対象外になりやすいもの
- 現社長から会社が買い取る車両・土地・車庫の代金。事業承継に際して被承継者に支払う譲受費用(土地・資産購入費用等)は補助対象経費になりません。個人名義のトラックや車庫を会社に移すときの支払いはここに当たります。
- 売上原価に相当する経費。全枠共通で対象外です。傭車費・燃料費・高速道路料金のような運行に直接かかる費用は、性質上ここに整理される可能性が高いと考えられます。
- 交付決定日より前に契約・発注・支払いをしたもの。採択されたからといって発注してはいけません。詳細は交付決定前の契約の扱いを確認してください。
- 国(独立行政法人を含む)の他の補助金・助成金と同一・類似内容で重複する事業。交付決定後に判明した場合は取消しの対象です。
逆にいえば、承継を機に新しく取り組むこと、たとえば配車や点呼の仕組みを入れ替える、倉庫の荷役設備を更新する、車庫や整備ピットのレイアウトを変えるといった取組は、事業承継促進枠の枠組みで検討する余地があります。ただし個別の経費区分の可否は事業承継促進枠の公募要領で必ず確認してください。本記事は要領の区分名までを断定するものではありません。
運送業は従業員何人までが小規模事業者等か
補助率が1/2か2/3かを分けるのが小規模事業者等の判定です。16次公募の公募要領では、小規模事業者等の定義は次の3区分で示されています。
| 業種区分 | 常時使用する従業員の基準 | 該当する主な業種の例 |
| 製造業その他 | 20人以下 | 製造業、建設業、運輸業など商業・サービス業・宿泊業・娯楽業に当たらない業種 |
| 商業(卸売業・小売業)・サービス業 | 5人以下 | 卸売業、小売業、サービス業 |
| 宿泊業・娯楽業 | 20人以下 | 旅館、ホテル、娯楽施設 |
運送業は商業(卸売業・小売業)にも宿泊業・娯楽業にも該当しません。したがって「製造業その他」の区分で判定されることになり、常時使用する従業員が20人以下であれば小規模事業者等として補助率2/3で申請できる可能性があります。トラック10台前後、ドライバー15人程度という規模の会社は、ここに入るケースが多いはずです。ただし自社がどの区分に当たるかの最終的な判断は公募要領の記載によりますので、申請前に必ず要領で確認してください。
なお、補助金全体の申請資格である中小企業者等の定義は中小企業基本法第2条に準拠しており、業種別に資本金・従業員数の基準が定められています。親会社が議決権の50%超を持つ子会社等(みなし大企業・みなし同一法人)は対象外です。大手荷主や元請運送会社の資本が入っている場合は、資本関係を先に確認してください。
専門家活用枠では小規模であること自体が加点
- 専門家活用枠では、小規模事業者等に該当すること自体が加点事由とされています。
- 売り手側で従業員基準を満たす場合は、上限450万円の小規模売り手支援類型という選択肢もあります(通常の売り手支援類型との同時申請は不可)。
他社に売る・他社を買うなら専門家活用枠
後継者がいない運送会社が同業他社に事業を譲る、逆に営業エリアを広げたい会社が近隣の運送会社を買う。この第三者承継(M&A)で使うのが専門家活用枠です。事業承継促進枠ではM&Aによる第三者承継は対象外なので、間違えないでください。
| 類型 | 対象 | 補助率 | 補助下限額 | 補助上限額 | DD費用上乗せ |
| 買い手支援類型(Ⅰ型・通常) | 経営資源を譲り受ける予定の中小企業等 | 2/3以内 | 50万円 | 600万円 | 200万円(合計800万円) |
| 売り手支援類型(Ⅱ型・通常) | 経営資源を譲り渡す予定の中小企業等 | 1/2または2/3以内 | 50万円 | 600万円 | 200万円(合計800万円) |
| 買い手支援類型(100億企業特例) | 将来売上高100億円を目指す買い手 | 1,000万円以下は1/2、1,000万円超2,000万円までは1/3 | 50万円 | 2,000万円 | ー |
| 小規模売り手支援類型 | 小規模事業者等の売り手 | 2/3以内 | なし | 450万円 | ー |
売り手支援類型の補助率が2/3になるのは、①物価高等の影響で営業利益率が直近事業年度またはその前年同時期と比べて低下している、②直近決算期の営業利益または経常利益が赤字である、のいずれかに該当する場合です。該当しなければ1/2以内となります。燃料費や人件費の上昇で利益率が落ちている運送会社は、①の該当可能性を決算書で確認する価値があります。
FA・仲介手数料は登録業者に払ったものだけ
運送業のM&Aで最大の金額になるのが仲介会社やファイナンシャルアドバイザーへの報酬です。ここには厳しい条件があります。委託費のうちFA業務・仲介業務に係る相談料・着手金・中間報酬・成功報酬等は、M&A支援機関登録制度に登録された登録FA・仲介業者が支援したものに限り補助対象です。未登録業者への支払いは全額対象外になります。
さらに、相見積りの相手も登録FA・仲介業者である必要があり、相見積りで最低価格を提示していない業者を選んだ場合は補助対象外とされています(16次公募 専門家活用枠 よくある質問)。付き合いの長い業者にそのまま頼むという進め方は、この制度では通用しません。登録の有無はM&A支援機関登録制度のサイトで検索できます。
報酬の時点にも規定があります。中間報酬の根拠となる基本合意書の締結、成功報酬の根拠となる最終契約の締結が、補助事業期間内に、かつ専門家契約の締結後に行われている必要があります。専門家契約より前に基本合意や最終契約を結んでいた場合は原則対象外で、覚書等で契約日を期間内に延ばす行為も原則認められません。手数料の扱いはM&A仲介手数料と補助金で詳しく整理しています。
また、補助事業期間内に経営資源引継ぎ(クロージング)が実現しなかった場合、上限額は通常版と100億企業特例で300万円、小規模売り手支援類型で50万円に縮小され、原則としてDD費用のみが補助対象経費になります。運送業のM&Aは車両・車庫・ドライバーの引継ぎ条件で最終合意が長引くことがあるため、スケジュールには余裕を持たせてください。
買った後の統合にはPMI推進枠
運送会社を買収した後、配車システムやデジタルタコグラフのデータ、会計システム、車両整備の管理台帳をどう一本化するか。ここに使えるのがPMI推進枠です。PMIは、M&Aの成否を分ける工程として近年重視されています。
| 類型 | 対象 | 補助率 | 補助下限額 | 補助上限額 |
| PMI専門家活用類型 | PMI計画の策定・実行に係る専門家活用費用 | 1/2以内 | 50万円 | 150万円 |
| 事業統合投資類型 | 製造ラインやIT・会計システムの統合等、経営統合効果を高める設備投資 | 1/2以内(小規模事業者等は2/3以内) | 100万円 | 800万円(賃上げ要件達成で1,000万円) |
対象となるM&Aには要件があります。被承継者・承継者間で事業再編・事業統合が実施済または実施予定であること、公募申請時点でM&Aのクロージング日から3年以内の取組であること(単独申請の場合)です。そして次のものは対象外とされています。
- グループ内の事業再編
- 物品・不動産等のみの売買
- 親族間の事業承継
- 同族関係者間・支配関係のある法人間の取引
- 承継後に承継者側の議決権が過半数に達しない場合(吸収分割・事業譲渡を除く)
- 譲渡価格0円や株価1円など取引価格の合理性が確認できない取引
- 休眠会社・事業実態が無い会社でのM&A
運送業で注意したいのは、事業譲渡の場合は有機的一体の経営資源(設備・従業員・顧客等)の引継ぎが必要で、不動産業以外でも原則として常時使用する従業員1名以上の引継ぎが必要とされている点です。車両と荷主契約だけを買い、ドライバーは引き継がないという形の取引は、PMI推進枠の対象となるM&Aに当たらない可能性があります。
事業統合投資類型で計上できない費用
- M&A仲介手数料、DD費用、M&Aコンサルティング費用、PMI専門家への手数料は事業統合投資類型では対象外です。これらはPMI専門家活用類型または専門家活用枠の側で申請します。
- 専門家活用枠の買い手支援類型とPMI専門家活用類型は、同一公募回での同時申請が可能です。買収費用と統合費用を別枠で積み上げられます。
- 専門家活用枠側のM&Aがクロージングしなかった場合、PMI推進枠側も補助対象外になります。
一部の営業所をたたむ場合の廃業・再チャレンジ枠
承継やM&Aに伴って、採算の合わない営業所や車庫を整理することがあります。この費用を見るのが廃業・再チャレンジ枠です。申請のかたちは2つあります。
| 申請形態 | どんなとき | 補助率 | 補助下限額 | 補助上限額 |
| 再チャレンジ申請(単独) | M&Aで事業を譲り渡せなかった会社の株主・個人事業主が、新たな挑戦のため既存事業を廃業する場合 | 2/3以内 | 50万円 | 300万円 |
| 併用申請 | 事業承継促進枠・専門家活用枠・PMI推進枠と同時に申請し、承継やM&Aに伴って既存事業や譲り受けた事業の一部を廃業する場合 | 他の補助事業枠の補助率に従う | 50万円 | 300万円 |
対象経費は、廃業支援費(司法書士への登記申請手続き経費)、在庫廃棄費、解体費、原状回復費、リースの解約費、土壌汚染調査費、移転・移設費の7区分です。運送業では、借りていた車庫や営業所の原状回復費、古い倉庫や洗車設備の解体費、機器の移転・移設費が現実的な計上対象になります。給油設備があった敷地では土壌汚染調査費も想定されます。
リース車両の解約金は対象外
- ファイナンスリース取引の解約に伴う解約金・違約金、リース資産の売買費用は対象外です。トラックをファイナンスリースで導入している会社が営業所を閉じる場合、その解約金は補助されません。
- 商品在庫等を売却して対価を得る場合の処分費も対象外です。中古車として売却する車両の関連費用は在庫廃棄費に計上できません。
- 廃業費用のみで300万円を申請することはできません。事業費側の申請とセットであることが前提です。
再チャレンジ申請を単独で行う場合は、廃業する対象会社と、議決権の過半数を有する支配株主または株主代表による共同申請が必要です。また廃業後の再チャレンジ事業計画を作成し、認定経営革新等支援機関の確認を受けている必要があります。単独申請の補助下限額には注意点があり、補助対象経費で75万円未満の申請は受け付けられません(2/3を掛けて50万円を下回るため)。
補助金の外にある運送業固有の確認事項
ここまでは補助金の話です。運送業の承継では、補助金の要件とは別に、事業そのものを続けるための確認が必要になります。補助金の採択と、事業の継続に必要な手続きは別物です。
| 確認する対象 | 承継方法による違い | 確認先 |
| 事業の許可・届出 | 法人の代表者交代では事業主体である法人が変わらない一方、事業譲渡・会社分割・合併では取扱いが異なります | 所管の運輸支局・都道府県の担当部署 |
| 車両の名義・登録 | 株式譲渡では所有者が変わらず、事業譲渡では個別の移転手続きが必要になります | 運輸支局、リース会社、保険会社 |
| 荷主との運送契約 | 株式譲渡では契約主体が変わらず、事業譲渡では相手方の承諾が必要になることがあります | 荷主企業、顧問弁護士 |
| ドライバーの雇用 | PMI推進枠の対象M&Aでは原則として常時使用する従業員1名以上の引継ぎが必要とされています | 社会保険労務士、労働基準監督署 |
| 車庫・営業所の賃貸借 | 事業譲渡では賃貸人の承諾、原状回復義務の帰属が論点になります | 賃貸人、不動産会社 |
これらは補助金事務局が審査する事項ではありませんが、事業計画の実現可能性を書くうえでは避けて通れません。書面審査の着眼点は【取組の目的・必要性】【取組の実現可能性】【取組の収益性】【取組の継続性】の4つとされています。許認可や車両の移転がどう進むのかを説明できない計画は、実現可能性の評価で不利になります。
相談先としては、事業承継・引継ぎ支援センターが全国47都道府県(東京都のみ本部と多摩地域の2拠点)に設置されています。無料で相談でき、親族内承継・第三者承継のどちらにも対応します。事業承継促進枠では、事業承継・引継ぎ支援センターまたは中小機構地域本部の支援を受けて事業承継計画書を策定したことが加点事由とされている点も見逃せません。詳しくは事業承継・引継ぎ支援センターの使い方をご覧ください。
16次公募の日程と、いま運送会社がやるべき準備
16次公募(令和7年度補正予算)のスケジュールは次のとおりです。公募要領は2026年9月4日に先行開示されており、2026年9月11日時点で申請受付はまだ始まっていません。
| 項目 | 時期 |
| 公募要領開示・サイト開設 | 2026年9月4日(金) |
| 説明会申込受付 | 2026年9月9日(水)〜10月7日(水)17:00まで |
| 説明会(オンライン) | 2026年10月9日(金)14:00〜 |
| 公募申請受付期間 | 2026年10月2日(金)〜11月6日(金)17:00まで |
| 採択日 | 2026年12月下旬以降 順次(予定) |
| 交付申請受付期間 | 2027年1月上旬〜11月中旬(予定) |
| 交付決定日 | 2027年1月下旬以降 順次(予定) |
| 事業実施期間 | 交付決定日〜2028年3月中旬(予定) |
| 実績報告期間 | 2027年6月上旬〜2028年3月下旬(予定) |
| 補助金交付手続き | 2027年10月上旬以降 順次(予定) |
「予定」と注記された項目は変更される場合があります。日程の詳細は16次公募のスケジュールで整理しています。
申請までにやること
| 順番 | やること | 所要の目安 |
| 1 | 枠を決める(誰に継ぐかを確定) | ー |
| 2 | GビズIDプライムアカウントを取得する | 1〜2週間、混雑時は3週間程度 |
| 3 | 認定経営革新等支援機関に確認書の発行を依頼する | 締切直前は依頼が集中するため早めに |
| 4 | 直近3期分の決算書・申告書を揃える(事業承継促進枠) | ー |
| 5 | 事業計画を作る(生産性向上要件・賃上げ表明の検討を含む) | ー |
| 6 | Jグランツで公募申請する | 2026年11月6日(金)17:00まで |
申請はJグランツによる電子申請のみで、それ以外の方法は受け付けられません。GビズIDプライムは取得に時間がかかるため、枠の検討と並行して手続きを始めてください。認定経営革新等支援機関による確認書も必須で、締切直前は確認依頼が間に合わない場合があると要領が注意喚起しています。
なお、行政書士(法人を含む)以外の者が有償で申請書類の作成を代行することは行政書士法違反の可能性があり、交付決定後に発覚した場合は取消しの対象とされています。支援を頼む相手の資格は確認してください。
採択率の実績と、運送業で落ちやすいパターン
事業承継・M&A補助金の名称になってからの採択実績は次のとおりです。
| 公募回 | 申請件数 | 採択件数 | 採択率 |
| 11次(2025年7月11日採択・専門家活用枠のみ実施) | 590件 | 359件 | 60.8% |
| 12次(2025年10月27日採択) | 742件 | 453件 | 61.0% |
| 13次(2026年1月15日採択) | 481件 | 293件 | 60.9% |
| 14次(2026年5月15日採択) | 512件 | 311件 | 60.7% |
4回続けて60.7〜61.0%で推移しており、おおむね6割という水準です。ただし業種別・都道府県別の採択件数は公開されておらず、運送業の採択率を示す一次データはありません。推移の詳細は採択率の推移をご覧ください。
資格審査の段階で落ちる典型的なパターンは、制度の構造を取り違えたものです。事業承継促進枠については、次のようなケースが「実質的な事業承継が行われたとみなされない」例として挙げられています。
- 経営権と所有権のいずれもの移転を伴わない代表者交代のみ
- グループ内の事業再編
- 物品・不動産等のみを保有する事業の承継(売買を含む)
- フランチャイズ契約またはそれに準ずるもの
- 従業員等へののれん分け(またはそれに準ずるもの)
- 休眠会社・事業実態が無い状態での代表者交代
- 設立間もない法人での代表者交代、開業直後の事業譲渡でその正当性が確認できない場合
- 合同会社の社員間での代表社員交代で経営者交代とみなされない場合
運送業では、車両と車庫だけを持つ資産管理的な法人を別に立てているケースがあります。そこだけを承継の対象にすると「物品・不動産等のみを保有する事業の承継」に当たる可能性があるため、承継の対象をどの法人・どの事業とするかを最初に整理してください。不採択の傾向は不採択になる理由にまとめています。
また、過去に経営資源引継ぎ補助金または事業承継・引継ぎ補助金の交付を受けていて、事業化状況報告の義務を履行していない場合は、今回の申請自体ができません。以前に補助金を受けたことがある会社は、報告の提出状況を先に確認してください。
出典・参考情報
最終更新日: 2026年9月11日。本記事の金額・日程・要件は16次公募要領(Ver.1.0・2026年9月4日開示)および事務局サイトの記載にもとづきます。スケジュールには事務局が「予定」と注記しているものが含まれ、変更される場合があります。許認可・車両登録・労務に関する記述は一般的な確認事項の整理であり、個別の取扱いは所管官庁および専門家にご確認ください。申請前に必ず各公式サイトで最新情報をご確認ください。本記事は採択や補助額を保証するものではありません。