製造業の事業承継・M&A補助金 2026年ガイド
この記事の結論
製造業の事業承継・M&Aでは、承継の相手と費用の時期で使う枠が変わります。補助率は1/3〜2/3、電子申請はJグランツのみ、16次公募の申請締切は2026年11月6日です。対象経費の区分は公募要領の表記どおりに整理してから申請してください。
製造業では経営者の高齢化に伴い、後継者不在で技術や取引先が失われることへの危機感が強まっています。事業承継・M&A補助金は、親族内・従業員承継を後押しする事業承継促進枠、第三者へのM&Aを支援する専門家活用枠、M&A後の生産ライン統合を支援するPMI推進枠、廃業時の費用を補う廃業・再チャレンジ枠の4つの枠で構成されています。製造業は設備投資を伴う事業計画が多く、承継後の生産性向上(付加価値額の伸び率)や賃上げの見通しを具体的な数字で示せるかが審査のポイントになります。M&Aによる工場の譲受では、設備の資産価値や環境リスクを把握するためのDD(デュー・ディリジェンス)の実施が実質的に求められる点も、事業計画を組み立てる前に押さえておく必要があります。対象経費の区分は公募要領の表記どおりに整理し、委託費やDD費用の見積りは登録M&A支援機関に早めに依頼しておくと手続きがスムーズに進みます。
| 申請枠 | 補助上限 | 補助率 | 主な対象 |
|---|---|---|---|
| 事業承継促進枠 | 上限800万〜1,000万円 | 1/3〜2/3 | 親族内承継・従業員承継など、既存の事業を引き継いだ後の設備投資や新たな取り組みを支援する枠です。 |
| 専門家活用枠 | 上限600万〜800万円(要件を満たす場合は最大2,000万円) | 1/3〜2/3 | 第三者へのM&A(譲渡・譲受)に伴う専門家への費用を支援する枠です。買い手側・売り手側それぞれの類型があります。 |
| PMI推進枠 | 公募要領で確認 | 1/3〜2/3 | M&Aの成立後に行う経営統合(PMI)の取り組みを支援する枠です。補助上限は公募回ごとに公募要領で確認してください。 |
| 廃業・再チャレンジ枠 | 原則300万円 | 1/3〜2/3 | 事業の廃業に伴う費用や、廃業後の再チャレンジを支援する枠です。他の枠と併用する類型もあります。 |
製造業で使える対象経費と申請枠
製造業の事業承継・M&Aで実際に相談の多い対象経費と、その使い方です。区分名は公募要領の表記に合わせています。金額は公募回ごとに変わるため、最新の公募要領で確認してください。
事業承継促進枠:製造業での使い方
工場の代表者が息子や工場長へ経営権と株式を引き継ぎ、設備更新を伴う事業計画を立てて申請する場面
審査で効く理由
経営権・所有権の移転と、承継後5年間の付加価値額の伸び率(年3%以上)を示す生産性向上計画が明確であるほど、審査の実現可能性・継続性の観点で評価されやすいため
専門家活用枠(買い手支援類型):製造業での使い方
同業の製造業者が後継者不在の工場を譲り受け、設備・技術者・取引先を含めて事業を引き継ぐ場面
審査で効く理由
経営資源(設備・技術者・取引先)の承継という取組の目的が明確で、専門家費用の必要性を説明しやすいため
DD費用:製造業での使い方
買収前に対象工場の設備の稼働状況や簿外債務、環境規制対応の有無を専門家に調査してもらう場面
審査で効く理由
製造設備は資産価値の見極めが難しく、買い手支援類型ではDDの実施が実質的に必須とされているため、取組の実現可能性を裏付ける材料になる
PMI推進枠(事業統合投資類型):製造業での使い方
M&A成立後に譲り受けた工場の生産ラインと自社の生産管理システムを統合する設備投資を行う場面
審査で効く理由
経営統合の効果を高める投資として位置づけられ、経営統合が実施済または予定であることを示せれば取組の必要性を説明しやすいため
委託費:製造業での使い方
M&A仲介会社(登録M&A支援機関)に工場の譲渡先探しや契約交渉を依頼する場面
審査で効く理由
登録M&A支援機関への支払いのみが対象経費となるため、専門家選定の妥当性を示せれば経費の必要性を説明しやすい
製造業の事業計画で書くべき観点
製造業で審査を通す事業計画には、次の観点を数字と根拠つきで書き込んでください。
- 承継予定者が対象会社の役員・従業員として何年業務に従事してきたか(事業承継促進枠は3年以上の実務経験が要件)を具体的に書く。
- 承継後5年間の付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)の伸び率が年3%以上となる根拠を、生産設備の稼働計画とあわせて示す。
- 賃上げ要件(上限額の引き上げを狙う場合は給与支給総額の伸び率3%以上)を達成する見通しと、全従業員・役員への表明状況を記載する。
- M&Aを伴う場合は、譲り受ける設備・技術者・取引先など経営資源の引継ぎ内容を具体的に列挙し、単なる物品の売買ではないことを示す。
- PMIまで見据える場合は、生産ラインやシステムの統合スケジュールと、統合後の収益改善の見込みを事業計画に落とし込む。