この記事の結論
事業承継・M&A補助金は、中小企業者等が世代交代や事業の引継ぎに踏み出すときに発生する費用を、国が一定割合で補助する制度です。補助の対象は設備投資だけではありません。
事業承継・M&A補助金とは(2026年時点の全体像)
事業承継・M&A補助金は、中小企業者等が世代交代や事業の引継ぎに踏み出すときに発生する費用を、国が一定割合で補助する制度です。補助の対象は設備投資だけではありません。M&Aの仲介手数料やデュー・ディリジェンス費用、統合作業を支援する専門家への報酬、さらには一部事業をたたむための原状回復費まで、承継のプロセスで実際にかかるお金が幅広く対象に含まれています。
現在の正式名称は事業承継・M&A補助金です。もともとは事業承継・引継ぎ補助金という名前で運用されていましたが、令和6年度(11次公募)から現在の名称に変わりました。中小機構の紹介ページでも「事業承継・引継ぎ補助金は令和6年度から事業承継・M&A補助金に名称が変わりました」と明記されています。検索で古い名称のページに行き当たることが多いため、要領や様式を探すときは必ず公募回(何次公募か)と年度を確認してください。
2026年9月11日時点で進行しているのは16次公募です。公募要領(Ver.1.0)は2026年9月4日に開示されましたが、これは要領の先行開示であって受付開始ではありません。実際の申請受付は2026年10月2日(金)から始まります。
いま申請できる状態ではありません
- 2026年9月4日:16次公募要領の開示とWEBサイト開設(要領を読める状態になっただけ)
- 2026年10月2日(金):公募申請の受付開始
- 2026年11月6日(金)17:00:公募申請の締切
- 受付開始までの期間に、GビズIDプライムの取得と認定経営革新等支援機関への確認依頼を終わらせておくのが現実的な段取りです
制度全体を貫くルールとして押さえておきたいのが、採択と入金は別のステップだという点です。採択は「交付申請をする権利が保障された」状態にすぎず、その後の交付申請と交付決定を経て、さらに事業を実施し、実績報告と額の確定を通過してはじめて補助金が振り込まれます。支払いは実費弁済方式(精算払い)ですので、いったんは全額を自己資金で立て替える必要があります。この資金繰りの前提を外すと、採択されても事業が回らなくなります。
16次公募のスケジュール(2026年10月2日受付開始)
16次公募の日程は事務局サイトの事業スケジュール欄に掲載されています。受付期間以外はいずれも「予定」と付記されており、確定次第更新されます。
| 項目 | 時期 |
| 公募要領開示・WEBサイト開設 | 2026年9月4日(金) |
| 説明会の申込受付 | 2026年9月9日(水)から10月7日(水)17:00まで |
| 事務局説明会(オンライン) | 2026年10月9日(金)14:00から |
| 公募申請の受付期間 | 2026年10月2日(金)から2026年11月6日(金)17:00まで |
| 採択日 | 2026年12月下旬以降 順次(予定) |
| 交付申請の受付期間 | 2027年1月上旬から2027年11月中旬(予定) |
| 交付決定日 | 2027年1月下旬以降 順次(予定) |
| 事業実施期間 | 交付決定日から2028年3月中旬(予定) |
| 実績報告の期間 | 2027年6月上旬から2028年3月下旬(予定) |
| 補助金の交付手続き | 2027年10月上旬以降 順次(予定) |
説明会は2026年10月9日(金)14:00からオンライン(Microsoft Teamsのタウンホール形式)で開催されます。専門家活用枠、PMI推進枠、事業承継促進枠、廃業・再チャレンジ枠の順に説明があり、枠ごとの所要時間は15分から55分です。申込受付は9月9日(水)から10月7日(水)17:00までで、受付締切が説明会当日より前に設定されている点に注意してください。
補助事業期間そのものは、事業承継促進枠・専門家活用枠・PMI推進枠のいずれの公募要領でも「2027年1月(下旬予定)から14か月以内」と書かれています。採択されてから事業を終えるまで1年以上の伴走が必要になるということです。詳しい日程の読み方は16次公募の締切と全日程で解説しています。
4つの補助枠の全体像(上限額と補助率の比較)
事業承継・M&A補助金は4つの枠に分かれ、それぞれ独立した公募要領PDFが用意されています。さらに専門家活用枠は3種類の要領(通常版・100億企業特例・小規模売り手支援類型)に分かれているため、実務上は要領が7本あると考えたほうが正確です。「事業承継・M&A補助金の上限は◯万円」と一括りにできない制度である点を最初に押さえてください。
| 補助枠・類型 | 主な対象 | 補助率 | 補助下限額 | 補助上限額 |
| 事業承継促進枠 | 5年以内に親族内承継・従業員承継を予定する中小企業者等 | 1/2以内(小規模事業者等は2/3以内) | 100万円 | 800万円(賃上げ要件達成で1,000万円) |
| 専門家活用枠 買い手支援類型(通常) | 経営資源を譲り受ける予定の中小企業等 | 2/3以内 | 50万円 | 600万円(DD費用上乗せで800万円) |
| 専門家活用枠 売り手支援類型(通常) | 経営資源を譲り渡す予定の中小企業等 | 1/2または2/3以内 | 50万円 | 600万円(DD費用上乗せで800万円) |
| 専門家活用枠 買い手支援類型(100億企業特例) | 将来売上高100億円を目指す買い手 | 1,000万円以下は1/2、1,000万円超2,000万円までは1/3 | 50万円 | 2,000万円 |
| 専門家活用枠 小規模売り手支援類型 | 小規模事業者等に該当する売り手 | 2/3以内 | 下限なし | 450万円 |
| PMI推進枠 PMI専門家活用類型 | PMI計画の策定・実行に専門家を使う承継者 | 1/2以内 | 50万円 | 150万円 |
| PMI推進枠 事業統合投資類型 | 製造ラインやシステムの統合等の設備投資 | 1/2以内(小規模事業者等は2/3以内) | 100万円 | 800万円(賃上げ要件達成で1,000万円) |
| 廃業・再チャレンジ枠(単独) | M&Aで譲り渡せなかった事業者の廃業 | 2/3以内 | 50万円 | 300万円 |
| 廃業・再チャレンジ枠(併用) | 承継・M&A・PMIに伴う一部廃業 | 併用する枠の補助率に従う | 50万円 | 300万円 |
枠を取り違えると審査の入口で落ちます。とくに多い誤解が、M&Aによる第三者承継を事業承継促進枠で申請してしまうケースです。事業承継促進枠は親族内承継と従業員承継のための枠であり、M&Aによる第三者承継は対象外です。枠選びの詳細は4つの枠の違いで比較しています。
事業承継促進枠のポイント(親族内承継・従業員承継)
事業承継促進枠は、5年以内に親族内承継または従業員承継等(事業再生を伴うものを含む)を予定している中小企業者等が対象です。承継を機に行う設備投資や販路開拓などの取組が補助対象になります。
承継予定者に求められる経験
法人の場合、承継予定者は次のいずれかに該当する必要があります。
- 対象会社の役員として3年以上の経験がある
- 対象会社に継続3年以上雇用され業務に従事している
- 役員経験と従業員経験の通算が3年以上ある
- 被承継者の親族(六親等内の血族・配偶者・三親等内の姻族)であり、対象会社の代表経験が無い
個人事業主の場合は、継続3年以上の雇用経験者、または被承継者の親族で代表経験が無い者が承継予定者になります。
対象会社と申請単位
公募申請の時点で対象会社が3期分の決算と申告を完了していることが必要です(個人事業主は開業届の提出から5年経過していること)。承継では経営権と所有権(株式・持分等)の両方が被承継者から承継者へ移転しなければなりません。代表者の肩書きだけを付け替える形は「実質的な事業承継が行われたとみなされない」として対象外になります。
申請は原則として被承継者を補助対象者として行います。個人事業主の場合は被承継者と承継予定者の共同申請が必須です。法人は同一法人内での代表者交代が対象、個人事業主は事業譲渡(廃業と開業)が対象という整理になっています。
補助率・上限額と賃上げ要件
| 区分 | 補助率 | 補助下限額 | 補助上限額 |
| 通常(小規模事業者等以外) | 補助対象経費の1/2以内 | 100万円 | 800万円(賃上げ要件達成で1,000万円) |
| 小規模事業者等 | 補助対象経費の2/3以内 | 100万円 | 800万円(賃上げ要件達成で1,000万円) |
| 廃業・再チャレンジ枠との併用 | 事業費の補助率に従う | ー | 300万円の上乗せ |
上限を1,000万円に引き上げる賃上げ要件は、補助事業完了日を含む事業年度(基準年度)から翌年度にかけて、従業員1人当たり給与支給総額の上昇率3%以上を達成し、かつ公募申請時までに全従業員と役員へ表明しておくことです。800万円を超える部分の補助率は一律1/2以内になります。未達の場合は引き上げ額(最大200万円)の返還を求められます。詳細は事業承継促進枠の解説記事にまとめています。
専門家活用枠のポイント(M&Aの買い手・売り手)
M&Aによる第三者承継で使うのが専門家活用枠です。買い手側・売り手側それぞれが独立して申請でき、同一案件で双方が申請することも制度上あり得ます。対象経費は謝金、旅費、外注費、委託費、システム利用料、保険料(表明保証保険)で、廃業費を併用する場合は廃業支援費・在庫廃棄費・解体費・原状回復費・リース解約費・土壌汚染調査費・移転移設費が加わります。
FA・仲介手数料は登録業者への支払いだけが対象
- 委託費のうちFA業務・仲介業務にかかる相談料・着手金・中間報酬・成功報酬は、M&A支援機関登録制度に登録された業者への支払いに限り補助対象です
- 相見積りを取る相手も登録FA・仲介業者である必要があり、相見積りで最低価格を提示していない業者を選んだ場合は補助対象外になります(16次公募 専門家活用枠FAQ)
- 中間報酬の根拠となる基本合意書の締結、成功報酬の根拠となる最終契約の締結は、専門家契約の締結後かつ補助事業期間内に行われている必要があります
売り手支援類型の補助率は、次のいずれかに該当すれば2/3以内、該当しなければ1/2以内です。
- 物価高等の影響で営業利益率が直近事業年度またはその前年同時期と比べて低下している
- 直近決算期の営業利益または経常利益が赤字である
もうひとつ重要なのがクロージングしなかった場合の扱いです。補助事業期間内に経営資源の引継ぎ(クロージング)が実現しなかった場合、補助上限額は通常版と100億企業特例が300万円、小規模売り手支援類型が50万円に縮小され、原則としてデュー・ディリジェンス費用のみが補助対象経費になります。M&Aは成立しないこともある取引ですので、この縮小ルールを前提に資金計画を立ててください。
なお、専門家活用枠は複数の公募回で「補助事業の特性に鑑み採択者を非公表とする」と事務局が明記しています。採択企業の一覧を探しても公開されていませんので、他社の採択事例で判断しようとするのは無理があります。枠の詳細は専門家活用枠の解説記事を参照してください。
PMI推進枠と廃業・再チャレンジ枠
PMI推進枠
PMI推進枠は、M&Aが成立した後の統合作業を支える枠です。令和6年度補正予算の12次公募から新設されました(11次公募は専門家活用枠のみの単独実施でした)。類型は2つあります。
| 類型 | 対象 | 補助率 | 下限 | 上限 |
| PMI専門家活用類型 | PMI計画の策定・実行にかかる専門家活用費用 | 1/2以内 | 50万円 | 150万円 |
| 事業統合投資類型 | 製造ラインやIT・会計システムの統合等、経営統合効果を高める設備投資 | 1/2以内(小規模事業者等は2/3以内) | 100万円 | 800万円(賃上げ要件達成で1,000万円) |
対象となるM&Aは、公募申請時点でクロージング日から3年以内の取組であることが条件です(単独申請の場合)。グループ内の事業再編、物品・不動産等のみの売買、親族間の事業承継、同族関係者間や支配関係のある法人間の取引は対象外です。事業統合投資類型では、M&A仲介手数料・デュー・ディリジェンス費用・M&Aコンサルティング費用・PMI専門家への手数料が対象外になります(これらはPMI専門家活用類型か専門家活用枠側で申請します)。詳細はPMI推進枠の解説記事へ。
廃業・再チャレンジ枠
廃業・再チャレンジ枠には2つの申請形態があります。ひとつはM&Aで事業を譲り渡せなかった中小企業者等の株主・個人事業主が新たな挑戦のために既存事業を廃業する「再チャレンジ申請(単独申請)」、もうひとつは他の3枠と同時に申請して承継やM&Aに伴う一部廃業を上乗せする「併用申請」です。併用申請の場合、廃業・再チャレンジ枠への別申請は不要で、該当枠への上乗せとして処理されます。
| 支援類型 | 補助率 | 補助下限額 | 補助上限額 |
| 再チャレンジ申請(単独) | 補助対象経費の2/3以内 | 50万円 | 300万円 |
| 併用申請 | 併用する枠の補助率に従う | 50万円 | 300万円 |
対象経費は廃業支援費(司法書士への登記申請手続き経費)、在庫廃棄費、解体費、原状回復費、リースの解約費、土壌汚染調査費、移転・移設費です。ただし商品在庫を売却して対価を得る場合の処分費は対象外、ファイナンスリース取引の解約金・違約金も対象外です。また廃業費用のみで300万円を申請することはできません(事業費側の申請とセットが前提)。単独申請では補助対象経費が75万円未満だと受け付けられません(2/3をかけて下限50万円を下回るため)。
申請できる人と、申請から入金までの流れ
申請できる人・申請できない人
枠にかかわらず共通する入口の要件があります。ここで落ちると内容の良し悪し以前の話になりますので、最初に自社が該当するか確かめてください。
| 項目 | 内容 |
| 電子申請 | GビズIDプライムアカウントが必須。Jグランツ以外からの申請は受け付けない |
| GビズIDの取得期間 | 1週間から2週間(混雑時は3週間程度) |
| 確認書 | 認定経営革新等支援機関(税理士・中小企業診断士等)による確認書の発行が必要 |
| 事業者の範囲 | 中小企業基本法第2条に準拠した中小企業者等。みなし大企業・みなし同一法人(親会社が議決権50%超を持つ子会社等)は対象外 |
| 対象外の法人格 | 社会福祉法人、医療法人、一般社団法人・一般財団法人、学校法人、農事組合法人、組合等。法人格のない任意団体も対象外 |
| 過去の報告義務 | 過去に経営資源引継ぎ補助金または事業承継・引継ぎ補助金の交付を受け、事業化状況報告の義務を履行していない場合は申請不可 |
| 申請書類の代行 | 行政書士(行政書士法人を含む)以外の者が有償で申請書類の作成を代行することは行政書士法違反の可能性があり、交付決定後に発覚すると取消しの対象 |
受付開始前にやっておくべき2つ
- GビズIDプライムの取得:印鑑証明書の準備と郵送審査が必要で、混雑期は3週間程度かかります。10月2日の受付開始に間に合わせるには9月中の申請が現実的です
- 認定経営革新等支援機関への確認依頼:締切直前は確認依頼が集中して間に合わない場合があると16次公募要領にも注意書きがあります。顧問税理士が認定支援機関かどうかを先に確認してください
小規模事業者等に該当するかどうかで補助率が変わる枠があります。定義は製造業その他が従業員20人以下、商業(卸売業・小売業)とサービス業が従業員5人以下、宿泊業・娯楽業が従業員20人以下です。専門家活用枠では小規模事業者等に該当すること自体が加点事由になります。
申請から入金までの7ステップ
この補助金は「採択されたら入金される」制度ではありません。採択、交付申請、交付決定、事業実施、実績報告、額の確定、精算払請求という7つの段階を踏みます。とくに交付決定前に着手した経費は補助対象外という原則は、実務でもっとも事故が多いポイントです。
| 段階 | やること | 注意点 |
| 1. 公募申請 | Jグランツから事業計画等を提出 | 認定経営革新等支援機関の確認書が必要。締切は2026年11月6日17:00 |
| 2. 審査 | 資格審査と書面審査の2段階 | 書面審査は外部有識者で構成される審査委員会が実施。審査料は徴収されない |
| 3. 採択 | 採択結果の通知 | 採択は交付申請をする権利の保障であり、交付決定ではない |
| 4. 交付申請・交付決定 | 経費の内訳等を確定させて交付申請、交付決定通知を受領 | 交付決定日より前の契約・発注・支払いは補助対象外 |
| 5. 補助事業の実施 | 交付決定日以降に契約・発注・支払いを行う | 補助事業期間は2027年1月(下旬予定)から14か月以内 |
| 6. 実績報告 | 様式第6で実績報告を提出 | 補助事業完了日から30日経過した日、または交付決定通知書記載の完了期限日から10日経過した日のいずれか早い方まで |
| 7. 額の確定・精算払 | 事務局が書類審査・現地調査等で額を確定し、様式第7の精算払請求書を提出 | 実費弁済方式。見積より安く済めば実費分のみ、超過交付があれば返還命令(未納は年利10.95%の延滞金) |
審査の着眼点は公募要領に明記されています。【取組の目的・必要性】【取組の実現可能性】【取組の収益性】【取組の継続性】の4点です。事業計画はこの4つに正面から答える構成にしてください。なお、不採択理由についての個別問い合わせに事務局は一切応じません。
補助事業が終わっても関与は続きます。事業化状況報告(様式第12)を毎事業年度終了後90日以内に提出する義務があり、証拠書類は報告年度終了後5年間の保存義務があります。提出期間は枠ごとに異なります。
| 枠 | 事業化状況報告の提出期間 |
| 事業承継促進枠 | 補助事業完了後5年間(合計6回) |
| 専門家活用枠(買い手・売り手・小規模売り手) | 補助事業完了後3年間(合計4回) |
| PMI推進枠 PMI専門家活用類型 | 補助事業完了後3年間(合計4回) |
| PMI推進枠 事業統合投資類型 | 補助事業完了後5年間(合計6回) |
| 廃業・再チャレンジ枠 | 補助事業完了後1年間(合計2回) |
採択率と過去公募の実績
現ブランドである事業承継・M&A補助金(11次公募以降)の採択実績は、事務局サイトのニュース欄で公表されています。11次から14次までの採択率は60.7%から61.0%の範囲に収まっており、4回連続でほぼ同じ水準です。
| 公募回 | 受付期間 | 申請件数 | 採択件数 | 採択率 |
| 11次(専門家活用枠のみ実施) | 2025年5月9日から6月6日 | 590件 | 359件 | 60.8% |
| 12次 | 2025年8月22日から9月19日 | 742件 | 453件 | 61.0% |
| 13次 | 2025年10月31日から11月28日 | 481件 | 293件 | 60.9% |
| 14次 | 2026年2月27日から4月3日 | 512件 | 311件 | 60.7% |
| 15次 | 2026年6月19日から7月24日 | 未公表 | 未公表(採択日は2026年9月中旬以降の予定) | ー |
枠別の内訳も公表されています。12次は事業承継促進枠が申請250件で採択152件、専門家活用枠が申請436件で採択266件、PMI推進枠が申請55件で採択34件、廃業・再チャレンジ枠が申請1件で採択1件でした。14次は事業承継促進枠が申請169件で採択103件、専門家活用枠が申請299件で採択180件、PMI推進枠が申請43件で採択27件、廃業・再チャレンジ枠が申請1件で採択1件です。
母数の規模感にも注目してください。1回あたりの申請件数は500件前後です。数万件規模の補助金と比べると応募自体が少なく、要件を満たして計画を丁寧に書けば十分に勝負できる領域だと言えます。一方で廃業・再チャレンジ枠の単独申請はどの回も1件前後と極端に少なく、実務上はほぼ併用申請で使われている枠だと分かります。
旧名称の事業承継・引継ぎ補助金時代(7次から10次)のデータも公開されています。7次は経営革新枠が申請313件で採択190件、専門家活用枠が申請498件で採択299件。8次は経営革新枠334件で採択201件、専門家活用枠374件で採択229件。9次は経営革新枠388件で採択233件、専門家活用枠440件で採択275件。10次は専門家活用枠のみの実施で申請518件、採択318件でした。ただし当時の経営革新枠は創業支援型を含む3類型で構成されており、現行の事業承継促進枠とは対象範囲が異なるため単純比較はできません。
都道府県別の採択件数は公表されていません
事務局サイトに都道府県別の集計はありません。地域別の採択数を掲載している情報源を見かけた場合は、一次資料の裏付けがあるかを確認してください。また専門家活用枠と廃業・再チャレンジ枠は複数回にわたり「補助事業の特性に鑑み採択者を非公表とする」と明記されています。
対象外・不採択を避けるための実務ポイント
公募要領とFAQには、対象外になりやすいパターンが具体的に列挙されています。よくある落とし穴を枠ごとに整理します。
事業承継促進枠で対象外になりやすい形
- 経営権と所有権のいずれの移転も伴わない代表者交代のみ
- グループ内の事業再編
- 物品・不動産等のみを保有する事業の承継(売買を含む)
- フランチャイズ契約またはそれに準ずるもの
- 従業員等へののれん分け(またはそれに準ずるもの)
- 休眠会社や事業実態が無い状態での代表者交代
- 設立間もない法人での代表者交代、開業直後の事業譲渡でその正当性が確認できない場合
- 合同会社の社員間での代表社員交代が経営者交代とみなされない場合
専門家活用枠で対象外になりやすい形
- M&A支援機関登録制度に未登録のFA・仲介業者への支払い(全額対象外)
- 相見積りで最低価格を提示していない業者を選んだ場合
- 専門家契約の締結より前に基本合意や最終契約を結んでいた場合(覚書等で契約日を期間内に延長する行為も原則不可)
- デュー・ディリジェンスを専門家に依頼せず自社で実施した場合の費用計上
PMI推進枠で対象外になりやすい形
- 親族間の事業承継、同族関係者間や支配関係のある法人間の取引
- 承継後に承継者側の議決権が過半数に達しない場合(吸収分割・事業譲渡を除く)
- 承継前から承継者側が既に議決権の過半数を保有していた場合
- 譲渡価格0円や株価1円など取引価格の合理性が確認できない取引
- 事業譲渡で有機的一体の経営資源(設備・従業員・顧客等)の引継ぎが行われていない場合
横断的な対象外ルールも押さえてください。事業承継に際して被承継者に支払う譲受費用(土地・資産の購入費用等)は補助対象になりません。売上原価に相当する経費も全枠共通で対象外です。国(独立行政法人を含む)の他の補助金・助成金と同一または類似の内容で重複する事業も対象外で、交付決定後に判明した場合は取消しの対象になります。
加点を取ったのに未達だと18か月のペナルティ
加点事由を申請して交付決定を受けたにもかかわらず、賃上げ等の要件が事業化状況報告で未達だった場合、未達報告から18か月間、中小企業庁が所管する他の補助金の申請で正当な理由なく大幅に減点されます。対象にはものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金、IT導入支援事業、小規模事業者持続化補助金、事業再構築補助金、新事業進出補助金、中小企業省力化投資補助事業などが含まれます。加点は「取れるから取る」ではなく、達成できる水準で申請してください。
枠どうしの併用ルールは公募要領で明確に定められています。
| 組み合わせ | 可否 |
| 廃業・再チャレンジ枠と、事業承継促進枠/専門家活用枠/PMI推進枠 | 併用可能(別申請は不要で主枠への上乗せ) |
| 専門家活用枠 買い手支援類型と、PMI推進枠 PMI専門家活用類型 | 同一公募回での同時申請が可能 |
| 事業承継促進枠と、専門家活用枠/PMI推進枠 | 同一公募回での申請は不可 |
| 専門家活用枠の3種(通常版・100億企業特例・小規模売り手支援類型)どうし | 同一公募回での重複申請は不可(いずれか1つを選ぶ) |
| 国(独立行政法人を含む)の他の補助金・助成金と同一または類似内容の事業 | 不可 |
公的医療保険・介護保険の診療報酬や介護報酬、固定価格買取制度等との重複も認められません(報酬事業の対象設備と完全に別の事業所で分離できる場合の例外的な取扱いはあります)。
また、都道府県によっては本補助金の採択事業者を対象に自己負担額の一部を追加補助する上乗せ制度があります。中小機構の紹介ページでは、熊本県の中小・小規模事業者生産性・売上げ向上後押し事業補助金(自己負担額の最大1/10を上限200万円まで軽減。令和7年9月4日以降に最低賃金を超える賃上げをしていること等が条件)と、高知県の事業承継等推進事業費補助金・事業承継奨励給付金が例示されています。全都道府県を網羅した一次資料は確認できていませんので、お住まいの都道府県の産業振興担当課のサイトで個別に確認してください。
M&Aの相手探しや承継の相談そのものは、全国の事業承継・引継ぎ支援センターが無料で受け付けています。47都道府県に設置されており(東京都のみ本部と多摩地域の2拠点で計48拠点)、親族内承継と第三者承継の両方に対応します。事業承継促進枠では、同センターまたは中小機構地域本部の支援を受けて事業承継計画書を策定したことが加点事由にもなります。
M&Aの仲介・FAを探す場合は、中小企業庁のM&A支援機関登録制度のデータベースで登録の有無を確認してください。補助対象になるのは登録機関への支払いだけです。登録機関からの報告ベースで集計された中小M&A件数は、2022年度が譲渡側4,036件・譲受側3,871件、2023年度が譲渡側4,681件・譲受側4,505件、2024年度が譲渡側4,940件・譲受側4,708件と公表されています(本補助金の交付案件は報告必須、それ以外は任意報告のため、日本の中小M&A全体の件数ではない点に注意してください)。
出典・参考情報
最終更新日: 2026年9月11日。本記事の数値・日付・制度名は上記の公式資料に基づいています。16次公募のスケジュールは受付期間以外すべて予定であり、変更される場合があります。申請にあたっては必ず各枠の公募要領(Ver.1.0以降の最新版)とよくある質問を確認してください。本記事は採択や補助額を保証するものではありません。