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事業承継補助金の財産処分制限|50万円以上の設備と承認手続

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補助金は「もらって終わり」の資金ではありません。国の補助金で買った設備は、補助金の交付目的に沿って使い続けることが前提であり、途中で売ったり捨てたりすることが自由にはできません。

事業承継補助金の財産処分制限とは何か

補助金は「もらって終わり」の資金ではありません。国の補助金で買った設備は、補助金の交付目的に沿って使い続けることが前提であり、途中で売ったり捨てたりすることが自由にはできません。この仕組みを財産処分制限といいます。事業承継・M&A補助金では、交付規程の第22条(財産の管理等)と第23条(財産の処分の制限)が根拠条文です。

処分制限財産に該当すると、補助事業が完了したあとも一定期間は事務局の承認なしに処分できません。ここでいう処分には、売却だけでなく、廃棄、他人への貸付、担保に入れる行為、補助金の交付目的に反する使い方までが含まれます。

この記事で扱う範囲

  • 処分制限の対象になる財産の基準(単価50万円・税抜)
  • 制限される期間の決まり方と、その確認先
  • 処分したいときの承認手続きと使用する様式
  • 納付を求められる金額の考え方と、免除される場面
  • リース・レンタルで調達した場合の扱い

財産処分制限が実務上の論点になりやすいのは、設備費を計上できる枠です。具体的には事業承継促進枠と、PMI推進枠のうち事業統合投資類型がこれに当たります。専門家活用枠のように委託費・謝金が中心の枠では、そもそも取得財産が生じないケースが多く、この論点は表面化しにくくなります。

なぜ承継の現場で問題になりやすいのか

事業承継やM&Aの直後は、経営体制も設備構成も動きやすい時期です。承継後に工場のレイアウトを変えたい、旧型機を下取りに出したい、遊休設備をグループ会社に貸したい、といった判断が出てきます。ところが補助金で取得した設備をその流れで動かすと、承認手続きを飛ばしたまま処分制限に抵触することがあります。実績報告が終わって補助金を受け取ったあとも制限が続く点が、見落とされやすい最大の理由です。

処分制限の対象になる財産の基準(単価50万円・税抜)

交付規程第23条第1項は、処分制限財産を「取得価格又は効用の増加価格が単価50万円(税抜)以上の機械、器具及びその他の財産」と定めています。金額の判定は税抜で行い、1件あたりの単価で見ます。事業承継促進枠の公募要領も、17.2(2)で「取得価額が1件当たり50万円以上(税抜)の取得財産については、事業終了後も一定期間において、その処分等につき事務局の承認を受けなければならない」と同じ基準を示しています。

判定項目内容根拠
金額基準取得価格または効用の増加価格が単価50万円(税抜)以上交付規程 第23条第1項
対象の種類機械、器具及びその他の財産交付規程 第23条第1項
工事も含むか取得して調達した新築・増築・改築・外構・外装・内装の各工事および設備で単価50万円(税抜)以上のもの事業承継促進枠 公募要領 別紙 補助対象経費(設備費)
リース・レンタル取得せずリース・レンタルで調達した場合は処分等の承認義務なし事業承継促進枠 公募要領 別紙 補助対象経費(設備費)
実績報告時の扱い単価50万円以上の取得財産がある場合、取得財産等管理明細表(指定様式)の入力が必要事業承継促進枠 公募要領 別紙 補助対象経費(設備費)

設備費そのものの下限(20万円)と混同しない

事業承継促進枠の設備費には、別に「品目1件に対し20万円以上(税抜)の設備のみが申請可能な補助対象経費となる」という下限が定められています。これは申請できるかどうかの入口の基準であり、処分制限の50万円とは別物です。20万円以上50万円未満の設備は、補助対象経費として申請できても処分制限財産にはならない、という整理になります。

金額帯(税抜・1件)設備費として申請処分制限財産に該当
20万円未満できない該当しない
20万円以上50万円未満できる該当しない
50万円以上できる該当する(承認手続きが必要)

なお、1件(案件・発注)50万円以上(税抜)の支払いを要するものは、原則として2者以上から見積を取得し、相見積の中で最低価格を提示した者を選定することが必須です。50万円という数字は、相見積の要否と処分制限の両方に登場するため、書類作成時に混同しないよう注意してください。対象経費の全体像は対象経費の記事で整理しています。

処分が制限される期間はどう決まるか

制限期間について、交付規程第23条第2項は次のように定めています。「適正化法第22条に準じる財産の処分を制限する期間は、補助金交付の目的及び減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号)を勘案して、事務局が別に定める期間とする」。

「何年」と一律には決まっていません

16次公募の公募要領および交付規程には、処分制限期間を「◯年」と一律に定めた記載はありません。財産の種類ごとに減価償却資産の耐用年数等に関する省令を勘案して事務局が定める仕組みです。自社の設備が何年間制限されるのかは、交付決定通知書および事務局が示す事務手引書で必ず確認してください。年数を推測で扱うと、承認が必要な時期に手続きを飛ばす原因になります。

公募要領の表現も「事業終了後も一定期間において、その処分等につき事務局への承認手続を行う義務があります」となっており、期間の長さは個別に確認する前提で書かれています。耐用年数を勘案する以上、机や器具のように耐用年数が短い財産と、建物附属設備のように長い財産では制限期間が異なり得る、と理解しておくのが実務的です。

起算点は補助事業の完了

交付規程第22条第1項は、取得財産等について「補助事業の完了後においても、善良な管理者の注意をもって管理し、補助金の交付の目的に従って、その効率的運用を図らなければならない」と定めています。つまり管理義務も処分制限も、補助事業が終わって補助金を受け取ったあとに続いていく義務です。16次公募のスケジュールでいえば、補助事業期間は2027年1月下旬(予定)から14か月以内を想定しており、その完了後がスタート地点になります。

時点16次公募の予定財産に関する義務
公募申請受付2026年10月2日から2026年11月6日17:00までなし(申請段階)
採択2026年12月下旬以降 順次(予定)なし(交付申請の権利が保障された段階)
交付決定2027年1月下旬以降 順次(予定)これ以降の契約・発注・支払いが対象
補助事業期間交付決定日から2028年3月中旬(予定)/2027年1月下旬から14か月以内を想定取得財産等管理台帳(様式第9)の整備
実績報告2027年6月上旬から2028年3月下旬(予定)取得財産等管理明細表(様式第10)の添付
補助事業完了後事務局が別に定める期間処分制限(承認申請が必要)・善良な管理者の注意義務
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「処分」に当たる行為の範囲

交付規程第22条第4項は、処分を「補助金の交付の目的に反する使用、譲渡、交換、貸付、担保に供する処分、廃棄等」と定義しています。売却だけを想像していると範囲を読み違えます。とくに貸付と担保提供は、資産が自社に残ったままでも処分に当たる点が重要です。

行為処分に当たるか実務でありがちな場面
売却・譲渡当たる承継後の設備入替えで旧機を下取りに出す
交換当たる同型機との入替えを差額精算で行う
貸付当たるグループ会社や取引先に無償・有償で貸す
担保に供する当たる運転資金の借入時に設備を担保に入れる
廃棄当たる故障・老朽化でスクラップにする
補助金の交付目的に反する使用当たる補助事業とは無関係の別事業に転用する

根抵当権の設定は認められません

事業承継促進枠の公募要領は、補助事業により整備した施設等の財産に対して根抵当権の設定を行うことは認められないと明記しています。建物の建設予定地に根抵当権が設定され「追加担保差入条項」がある場合、新築・改修した建物にも新たに根抵当権が及ぶことになるため、権利者である金融機関等から建物部分に係る根抵当権を設定する義務の免除について同意を得る必要があります。承継と同時に金融機関から資金調達をする案件では、この調整を早い段階で始めてください。

補助対象事業以外に使わない義務

公募要領は、取得した設備(工事分を含む)は補助対象事業のみに使用しなければならないとし、現物を他の設備等と明確に区別するよう求めています。具体的には、見える位置に令和7年度 事業承継・M&A補助金の対象設備であることを明示したシールを貼る、シールを貼れない場合は事務所等にその旨を記載した書面を掲示する、といった方法が示されています。他事業との混同や私的使用がないよう細心の注意を払うことも明記されています。実地調査が入った際に、この区別ができているかどうかが確認の対象になります。

処分したいときの承認手続きと様式

処分制限期間中に処分をしようとするときは、交付規程第23条第3項により、あらかじめ様式第11-1による財産処分承認申請書を事務局に提出し、その承認を受けなければなりません。「あらかじめ」ですから、売却契約を結んだあとや廃棄したあとの事後申請では要件を満たしません。

手順やること様式根拠
1処分制限財産に該当するか、制限期間内かを確認する取得財産等管理台帳(様式第9)で確認交付規程 第22条第2項
2処分の前に財産処分承認申請書を提出する様式第11-1交付規程 第23条第3項
3事務局が申請書の内容を審査する-交付規程 第23条第5項
4処分内容が適正と認められれば財産処分承認を受ける様式第11-2(財産処分承認通知書)交付規程 第23条第5項・第6項
5承認通知書に記載のある書類を添えて処分結果を報告する様式第11-3(財産処分報告書)交付規程 第23条第6項
6納付を求められた場合は通知にしたがって納付する様式第11-4(財産処分納付通知書)交付規程 第23条第7項

財産まわりで使う様式の一覧

様式名称使う場面
様式第9取得財産等管理台帳取得財産等がある場合に備えて管理する(常時)
様式第10取得財産等管理明細表当該年度に取得財産等があるとき、実績報告書に添付
様式第11-1財産処分承認申請書処分制限期間内に処分しようとするとき(事前)
様式第11-2財産処分承認通知書事務局から交付される(添付すべき書類が記載される)
様式第11-3財産処分報告書承認を受けて処分したとき/災害等による取壊し・廃棄のとき
様式第11-4財産処分納付通知書事務局が納付を求めるときに交付される
様式第11-5取得財産転用承認申請書所有者を変えずに目的外使用(転用)したいとき

補助事業期間中に計画そのものを変えたい場合は、財産処分の手続きではなく計画変更の承認手続きになります。経費区分間の配分変更や、単価50万円以上の物品・役務を別のものに変える場合の取扱いは、計画変更の承認の記事で整理しています。

納付を求められる金額と、免除される2つの場面

処分が承認されても、それで話が終わるとは限りません。交付規程第22条第4項は、事務局は取得財産等を処分する場合に「残存簿価相当額又は鑑定評価額若しくは処分により得られた収入額又は見込まれる収入額の全部若しくは一部」を指定口座に納付させることがある、と定めています。さらに第23条第7項では、処分制限財産を処分するときに、当該処分制限財産に係る補助金額を限度としてその収入の全部または一部を納付させることができる、としています。

項目規定内容根拠
納付の基準になる金額残存簿価相当額、鑑定評価額、処分により得られた収入額または見込まれる収入額の全部もしくは一部交付規程 第22条第4項
納付額の上限当該処分制限財産に係る補助金額を限度交付規程 第23条第7項
手続き様式第11-4の財産処分納付通知書により納付を求められ、命令にしたがって納付する交付規程 第23条第7項
準拠する取扱い補助事業等により取得し又は効用の増加した財産の処分等の取扱いについて(平成16・6・10会課第5号)の各規定を踏まえる交付規程 第23条第7項

モデルケースで考える

補助対象経費600万円の機械を導入し、補助率2分の1で300万円の補助を受けたとします。この機械は単価50万円(税抜)以上なので処分制限財産です。制限期間中に売却して収入を得た場合、その収入の全部または一部の納付を求められることがあり、納付額はこの機械に係る補助金額である300万円が限度になります。実際にいくら納付するかは、残存簿価相当額や鑑定評価額、処分方法などをもとに事務局が判断します。ここに書いた金額は制度の理解のためのモデルケースであり、個別の案件で同じ結果になることを示すものではありません。

承認を取らずに処分した場合

無断処分は、交付規程第21条第1項第1号の「法令、本規程又は法令若しくは本規程に基づく事務局の処分若しくは指示に違反した場合」に当たり得ます。この場合、事務局は交付決定の全部または一部を取り消すことができ、すでに交付されている補助金について期限を付して返還を命じます。さらに第21条第3項により、取消しの理由が第1号から第9号(第4号・第5号を除く)に当たる場合は、補助金の受領日から納付日までの期間に応じて年利10.95%で計算した加算金の納付も併せて命じられます。返還期限内に納付がなければ、第17条第3項の準用により年利10.95%の延滞金も発生します。

交付規程は、これとは逆に納付が免除される場面も2つ定めています。どちらも「勝手にやってよい」という意味ではなく、所定の様式を提出することが条件です。

1. 補助事業の成果を活用する転用

交付規程第23条第8項は、補助事業者が本補助事業の成果を活用して実施する事業に使用するために取得財産等(機械・設備に限る)を転用する場合、様式第11-5による取得財産転用承認申請書を事務局に提出して承認を受ければ、転用に係る納付が免除されると定めています。ここでいう転用は「財産の所有者の変更を伴わない目的外使用」を指します。所有者が変わる譲渡は転用ではなく通常の処分です。

2. 災害等による取壊し・廃棄

交付規程第23条第9項は、取得財産が災害により使用できなくなった場合、もしくは立地上または構造上危険な状態にある場合の取壊しまたは廃棄を行った場合について、第3項の事前承認によらず、様式第11-3による財産処分報告書を提出することで財産処分の承認を受けたものとみなすことができるとしています。この場合、第23条第7項および第22条第4項の納付は免除されます。

場面対象提出する様式納付根拠
成果活用のための転用機械・設備に限る(所有者の変更を伴わない目的外使用)様式第11-5(事前の承認申請)免除される交付規程 第23条第8項
災害により使用できなくなった場合の取壊し・廃棄取得財産様式第11-3(事前承認によらず報告)免除される交付規程 第23条第9項
立地上・構造上危険な状態にある場合の取壊し・廃棄取得財産様式第11-3(事前承認によらず報告)免除される交付規程 第23条第9項
上記以外の売却・譲渡・貸付・担保提供・廃棄処分制限財産様式第11-1(事前承認)と様式第11-3求められることがある交付規程 第23条第3項・第7項

「壊れたから捨てた」だけでは足りません

免除の対象は、災害によって使用できなくなった場合と、立地上または構造上危険な状態にある場合の取壊し・廃棄です。通常の故障や老朽化による廃棄はこれに当たらない可能性があるため、事前に様式第11-1で承認を求めるのが安全です。判断に迷う場合は、処分を実行する前に事務局へ相談してください。

日常の管理義務と保存すべき書類

財産処分制限の話は、処分するときだけの論点ではありません。処分の局面で困らないためには、日常の管理と記録が前提になります。交付規程は次の3点を求めています。

義務内容期間・様式根拠
善良な管理者の注意義務補助事業の完了後も、補助金の交付目的に従って効率的に運用する処分制限期間中交付規程 第22条第1項
取得財産等管理台帳の備付け取得財産等について台帳を備えて管理する様式第9交付規程 第22条第2項
取得財産等管理明細表の添付当該年度に取得財産等があるとき、実績報告書に添付する様式第10交付規程 第22条第3項
帳簿・証拠書類の保存他の経理と明確に区分して経理し、収支の状況を明らかにしておく補助事業完了の日の属する年度の終了後5年間交付規程 第10条
事業化状況報告の証拠書類保存報告の証拠となる書類等を保存する当該報告に係る事業年度終了後5年間交付規程 第25条第2項

実地調査と会計検査院

事業承継促進枠の公募要領は、事業の進捗状況確認のため事務局が事業者および取引先等に実地調査に入る場合があること、また事業終了後に会計検査院等が実地検査に入ることがあることを明記しています。この検査により補助金の返還命令等の指示がなされた場合は、これに従わなければなりません。交付規程第20条第2項も、事務局および中小機構が必要と認めたときは事業所等に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査し、関係者に質問できると定めています。

設備にシールを貼る、台帳を更新する、設備の設置場所を記録するといった作業は地味ですが、数年後の調査に耐える唯一の材料です。承継で経理担当者が交代する場合は、この管理義務を引き継ぎ事項として明文化しておくことを勧めます。事業化状況報告の全体像は事業化状況報告の記事で解説しています。

リース・レンタルなら処分制限は生じない

事業承継促進枠の公募要領は、設備費について「取得して調達した新築工事、増築工事、改築工事、外構工事、外装工事・内装工事及び設備で単価50万円(税抜)以上のものについては、補助事業終了後も一定期間において、その処分等につき事務局への承認手続を行う義務があります。取得せずに、リース・レンタルで調達した場合は当該の義務はありません」と明記しています。

つまり、同じ設備でも調達方法によって将来の縛りが変わります。承継直後で事業の形が固まりきっていない、数年内に生産体制を見直す可能性がある、といった事情があるなら、リース・レンタルという選択肢は検討に値します。

比較項目取得(購入)リース・レンタル
補助対象になる範囲調達費用(単価20万円以上・税抜の設備)リース・レンタル期間を基にした補助事業期間分で、補助事業期間内に支払った分のみ
処分制限単価50万円(税抜)以上は承認手続きの義務あり義務なし
取得財産等管理明細表単価50万円以上があれば実績報告で入力が必要取得財産ではないため不要
交付決定前の契約交付決定日以降の契約・発注・支払いが条件既に借用している物等の交付決定日より前に支払った賃借料は対象外

リースなら何でもよいわけではない

リース・レンタルは補助事業期間内に支払った分のみが対象です。設備を長く使うほど自己負担が積み上がる構造なので、補助額だけを見て判断すると総コストで不利になることがあります。また、リース機器等の契約名義変更等にともなう精算解約金等は補助対象経費になりません。承継にともなって既存リースの名義を変える予定がある場合は、その費用が補助対象外である前提で資金計画を立ててください。

設備費で対象外になる主なもの

取得する場合でも、そもそも補助対象にならない品目があります。事業承継促進枠の公募要領が挙げる例としては、金型、DIY工事設備材料費、消耗品(原則対象外)、宿泊施設・飲食店等で使用する調理器具や食器・布団・ユニフォーム等、中古品購入費、不動産の購入費、道路運送車両法に規定される自動車の購入費(リース・レンタルは対象)、パソコン・タブレット端末・スマートフォン・カメラ等の汎用性が高く使用目的を特定できない物、海外の店舗・事務所に係る工事費用や海外で使用する機械装置等、家庭用および一般事務用ソフトウェアの購入費、売上原価・製造原価の対象となるもの、自動車等車両の修理費・車検費用などがあります。さらに、事業承継における資産等の譲渡費用は対象になりません。

枠別に見た財産処分制限の当たり方

4つの枠のうち、取得財産が生じやすいのは設備投資を伴う枠です。自社がどの枠で申請するかによって、この論点の重さが変わります。

枠・類型設備費の計上財産処分制限の当たり方事業化状況報告の期間
事業承継促進枠あり(品目1件20万円以上・税抜)単価50万円以上の取得財産・工事が対象。実務上いちばん論点になる補助事業完了後5年間(合計6回)
PMI推進枠 事業統合投資類型あり単価50万円以上の取得財産・工事が対象。要領に事業承継促進枠と同趣旨の記載補助事業完了後5年間(合計6回)
PMI推進枠 PMI専門家活用類型なし(謝金・旅費・委託費)取得財産が生じにくい補助事業完了後3年間(合計4回)
専門家活用枠(買い手・売り手・小規模売り手)なし(謝金・旅費・外注費・委託費・システム利用料・保険料)取得財産が生じにくい補助事業完了後3年間(合計4回)
廃業・再チャレンジ枠なし(廃業支援費・在庫廃棄費・解体費・原状回復費など)取得財産が生じにくい補助事業完了後1年間(合計2回)

事業化状況報告は毎事業年度終了後90日以内に様式第12で提出します。交付規程第21条第1項第9号は、事業化状況の報告を行わなかった場合を交付決定の取消し事由として挙げています。財産処分制限の期間と事業化状況報告の期間は別の制度ですが、どちらも「補助事業が終わったあとに続く義務」であり、承継後の担当者に確実に引き継ぐべき事項です。

承継が重なるときの注意

補助事業の全部または一部を他に承継させようとするときは、交付規程第11条第1項第6号により、あらかじめ様式第3の申請書を提出して事務局の承認を受ける必要があります。事業承継補助金を使ったあとにさらにM&Aで事業を譲り渡すといった動きがある場合、財産処分の承認と計画変更の承認の両方が関係し得ます。時系列を整理したうえで、実行前に事務局へ相談してください。

実務チェックリスト

交付決定から補助事業完了まで

  • 取得予定の設備・工事のうち、単価50万円(税抜)以上のものを一覧化する
  • 1件50万円以上(税抜)の支払いには2者以上の相見積を取得し、最低価格の者を選定する
  • 契約・発注・支払いがすべて交付決定日以降かつ補助事業期間内に収まっているか確認する
  • 取得財産等管理台帳(様式第9)を作成し、設置場所・取得価額・取得日を記録する
  • 対象設備であることを示すシールを貼る、または書面を掲示する
  • 建物への根抵当権設定が生じないか、金融機関と事前に調整する

実績報告と、その後

  • 単価50万円以上の取得財産があれば取得財産等管理明細表(様式第10)を実績報告に添付する
  • 交付決定通知書と事務手引書で、自社の財産の処分制限期間を確認して記録する
  • 帳簿・証拠書類は補助事業完了の日の属する年度の終了後5年間保存する
  • 事業化状況報告(様式第12)を毎事業年度終了後90日以内に提出する
  • 売却・廃棄・貸付・担保提供を検討し始めた段階で、実行前に様式第11-1を準備する
  • 経理・総務の担当者が交代する際、これらの義務を引き継ぎ書類に明記する

16次公募の位置づけ

16次公募は2026年9月4日に公募要領が開示され、申請受付は2026年10月2日から2026年11月6日17:00までです。2026年9月11日時点では受付は始まっていません。交付決定は2027年1月下旬以降 順次(予定)で、財産処分制限が実際に効いてくるのはその先の話になりますが、設備を購入するかリースにするかという判断は申請書を作る段階で必要です。相談先としては、認定経営革新等支援機関のほか、各都道府県の事業承継・引継ぎ支援センターがあります。

関連して、交付決定前に契約してしまった場合の取扱いは交付決定前の契約、実績報告と精算の流れは実績報告と精算の記事で解説しています。

出典・参考情報

最終更新日: 2026年9月11日。本記事は16次公募の公募要領(Ver.1.0・2026年9月4日開示)および交付規程の記載に基づいています。制度の内容・様式・スケジュールは変更される場合があります。申請および財産の処分にあたっては、必ず事業承継・M&A補助金事務局の公式サイトで最新の公募要領・交付規程・事務手引書を確認し、判断に迷う場合は事務局に照会してください。本記事のモデルケースは制度理解のための計算例であり、採択や補助額、納付額を保証するものではありません。

よくある質問(FAQ)

A

「◯年」と一律には決まっていません。交付規程第23条第2項は、処分を制限する期間を、補助金交付の目的および減価償却資産の耐用年数等に関する省令を勘案して事務局が別に定める期間としています。公募要領の表現も「事業終了後も一定期間」です。自社の財産が何年間制限されるかは、交付決定通知書と事務局の事務手引書で必ず確認してください。なお期間内であっても、事前に様式第11-1で承認を受ければ処分自体は可能です。

A

取得価格または効用の増加価格が単価50万円(税抜)以上の機械、器具及びその他の財産です(交付規程第23条第1項)。工事についても、取得して調達した新築・増築・改築・外構・外装・内装の各工事および設備で単価50万円(税抜)以上のものが対象になります。なお、事業承継促進枠の設備費には「品目1件に対し20万円以上(税抜)」という申請の下限が別にありますので、混同しないよう注意してください。

A

必要です。交付規程第22条第4項は処分を「補助金の交付の目的に反する使用、譲渡、交換、貸付、担保に供する処分、廃棄等」と定義しており、廃棄も処分に含まれます。ただし、災害により使用できなくなった場合や、立地上または構造上危険な状態にある場合の取壊し・廃棄については、第23条第9項により、事前承認によらず様式第11-3の財産処分報告書を提出することで承認を受けたものとみなすことができ、納付も免除されます。

A

貸付は交付規程第22条第4項の処分に含まれるため、処分制限期間内であれば事前に様式第11-1による財産処分承認申請書の提出が必要です。所有権が自社に残っていても対象になる点が見落とされやすいところです。また公募要領は、取得した設備は補助対象事業のみに使用しなければならないとし、他の設備等と明確に区別することを求めています。

A

金額は一律ではありません。交付規程第22条第4項は、残存簿価相当額、鑑定評価額、処分により得られた収入額または見込まれる収入額の全部もしくは一部を納付させることがあると定め、第23条第7項は、当該処分制限財産に係る補助金額を限度としてその収入の全部または一部を納付させることができるとしています。実際の納付額は様式第11-4の財産処分納付通知書で示されます。

A

かかりません。事業承継促進枠の公募要領は、取得せずにリース・レンタルで調達した場合は処分等の承認手続きを行う義務はないと明記しています。ただし補助対象になるのは、リース・レンタル期間を基にした補助事業期間分で、補助事業期間内に支払った分のみです。また、既に借用している物等について交付決定日より前に支払った賃借料は対象外で、リース機器等の契約名義変更等にともなう精算解約金等も対象になりません。

A

交付規程第21条第1項第1号の規定違反に当たり得ます。事務局は交付決定の全部または一部を取り消すことができ、すでに交付されている補助金について期限を付して返還を命じます。さらに第21条第3項により、補助金の受領日から納付日までの期間に応じて年利10.95%で計算した加算金の納付を併せて命じられます。返還期限内に納付がない場合は年利10.95%の延滞金も発生します。気づいた時点で速やかに事務局へ相談してください。

A

専門家活用枠の補助対象経費は謝金・旅費・外注費・委託費・システム利用料・保険料(および併用時の廃業費)であり、設備費がないため取得財産が生じにくい構成です。したがって実務上この論点が表面化する場面は限られます。設備投資を伴うのは事業承継促進枠とPMI推進枠の事業統合投資類型ですので、これらの枠で申請する場合は取得財産の管理と処分制限を前提に計画を立ててください。

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本記事の監修

齊木祐介(株式会社ASI 代表取締役)

AI・ロボティクスの導入支援、補助金・助成金の活用支援、専門メディアの運営など複数事業を統括。実務で得た知見をもとに、本サイトの情報を監修しています(運営:株式会社ASI)。

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